純情エゴイスト
□心と体
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曖昧に塗ったら 斑ムラが出来る
斑ムラは孤独を呼び 孤独は優しさに縋スガる
一色に染まれば それが貴方の証となる
証は日に日に薄くなるもの
放っておけば やがて白に戻る
機を窺ウカガっていた陰が忍びよる
宮城に言われたその日から弘樹は約束通り二十時には仕事を終えた。
だが、大学を出た弘樹が向かうのは家ではなく、クリスマスのイルミネーションが輝く夜の街だった。
弘樹は手当たり次第に書店を巡り歩く。
そうして時間を潰して家に帰る。
家に着くのはかなり遅い時間なのだが、野分のいない家は寝るためだけの空間となっている弘樹にはむしろ都合が良かった。
家に着くと、すぐに風呂に入る。
上がって寝間着に着替え、向かうのは自分の部屋ではなく野分の部屋。
ここ最近、弘樹は自分の部屋だと眠れなくなっていた。
野分の部屋だと、落ち着いて眠ることができる。
だがら、野分をカンジテ今日を終わらせる。
宮城は、あれから昼になると弘樹のところに押しかけて来て、弁当が無いとわかると食堂まで連行し、必ず昼食をともにした。
おかげで、昼食だけは宮城の監視のもとしっかり食べるはめになった。
常に構ってくる宮城から抜け出せる休日、弘樹は図書館に来ていた。
朝から来て、昼も食べずに本に集中する。
そうして、閉館時間になってやっと重たい腰を上げるのだ。
外に出ると温かい館内とは違って寒さが身に凍みる。
コートの前をしっかり閉めて、真っ暗な闇に覆われた空の下、イルミネーションで彩イロドられた街を歩いて行く。
努めてゆっくり歩いていると、輝かしいイルミネーションに目が奪われる。
今までそんなに気にした事がなかったが、あらためて見るとキラキラ、チカチカと星を散りばめた様だ。
見上げても見えぬ星を…。
(雪が降れば、もっと綺麗にみえんのかな。)
濁る空を見ながらそんな事を思っていると、前から来た人とぶつかってしまった。
軽くだったのだが、不意打ちだったため体が傾く。
だが、ぶつかった男に腰を支えられ転ぶ事はなかった。
「申し訳ない、大丈夫ですか?」
耳に響く低音ボイス…上げた視線に映ったのは陰のような真っ黒い髪と整った顔。
「・・あ、はい。大丈夫です。」
歯切れが悪くなりつつ答えると、男は腰から手を離すと微笑みを浮かべて人込みの中に消えた。
弘樹もイルミネーションから前へと視線を戻し歩きだす。
(見つけた、新しいオモチャ…)
弘樹の後ろ姿を歪んだ陰が捕トラえる。